「仕事も子育ても一人でこなしてるのに、不登校の子どものケアまでするのはもう限界…」――そんな思いを抱えていませんか?

シングルマザーにとって、不登校の問題は単なる子どもの悩みではなく、仕事・経済・家庭の安定に直結する深刻な課題ですよね。

ネットで検索すれば「不登校の解決のために、生活リズムを整えましょう」「外に連れ出しましょう」のような情報は溢れていますが、「シングルマザーには無理なのでは?」と思うこともしばしばあるのではないでしょうか。

私は公認心理師として10年以上にわたりたくさんのシングルマザーに不登校のカウンセリングをしてきましたが、シングルマザーの方の場合、一般的な不登校対応に加えて特別な家庭内対応が必要と感じています。

今回の記事では、シングルマザーが直面するリアルな悩みに答え、心理学の知見と実践的な解決策をお伝えできればと思います。

不登校とシングルマザーの関係

不登校とシングルマザーの関係

お子さんが不登校でシングルマザーの方は、もしかしたら「お父さんがいないから不登校になったんじゃない?」のような心ない言葉をかけられたことがあるかもしれません。

そのため、「私が離婚したから子どもが不登校になったのでは」と罪悪感を抱えるお母さんはとても多いのです。

しかし、離婚に罪悪感を感じてしまっている方にまずお伝えしたいのは、不登校は様々な原因が絡まって起こることで、離婚のせいではないということです。

世の中には、夫婦仲が悪いのに「子どものため」といって無理して一緒にいるのを子どもが気づいている家庭や、不登校対応をお母さんが必死に頑張っているのに台無しにしてしまうお父さんもいます。離婚した方が子どものためになったケースも世の中たくさんあるはずです。

家にお父さんがいて不登校になる子もたくさんいます。

そのため、不登校とシングルマザーであることに直接的な関係はないと思います。そのため、離婚したせいで不登校になったとご自分を責めるのはやめてください。

ただ良くないのは、離婚したこと自体ではなく、離婚したことをお母さんが負い目に感じて子どもの言いなりになったり過保護になってしまうことです。

お母さんは仕事に育児にと日々頑張っているのですから、自信を持ってください。お母さんも頑張っているのだから子どもも頑張る、そういった協力関係を目指して行きましょう。

 

シングルマザー家庭の不登校の対応方法と注意点

シングルマザー家庭の不登校の対応方法と注意点

ひとり親家庭はどうしても家庭内の全てを1人で担うため、仕事との両立がかなりハードになります。そのため、父親・母親の両方がいる家庭の不登校対応にプラスして、ひとり親ならではの注意点や対処法があります。

シングルマザー家庭の不登校の対応方法については、以前「不登校で母子家庭の場合の対応法4つ!注意点も紹介」という記事にまとめたので、そちらをご覧ください。

子が不登校のときシングルマザーが抱える悩みと対処法

子が不登校のときシングルマザーが抱える悩みと対処法

シングルマザー家庭での不登校の子の対応方法はこちらの記事にまとめましたが、一番大事なのはお母さんのメンタルが元気になることです。

離婚の負い目を感じることで、無理して1人でどうにか頑張ろうとしたり、子どもが好ましくない言動をしても叱れなかったり、周囲の目が気になって苦しかったり…色々な心労があると思います。

だからこそ、まずはお母さんのココロを整理し、ブレない軸を作ることが大事です。

ここでは、シングルマザーが抱えてしまういやすい悩みと対処法について、まとめていきますね。

【シングルマザーの不登校の悩み①】「不登校は私のせいかも」という罪悪感

【シングルマザーの不登校の悩み①】「不登校は私のせいかも」という罪悪感

不登校の子どもを持つお母さんの多くが、「私の育て方が悪かったのかもしれない」と自分を責めます。

しかし私が10年以上不登校対応をしてきて思うのは、不登校には性格特性・学校環境・発達特性・いじめ・体調の問題など、複数の要因が絡み合っています。

自分を責めるのは、子どもへの愛情の裏返しでもあると思います。そして、一生懸命に解決策を探している証拠でもあると思うのです。ですので、ご自身を責めないでくださいね。

「私はこんなに頑張っている」と、自分で自分を認めてあげましょう。

【シングルマザーの不登校の悩み②】自己効力感(セルフ・エフィカシー)

【シングルマザーの不登校の悩み②】自己効力感(セルフ・エフィカシー)

心理学でいう自己効力感(セルフ・エフィカシー)とは、「自分にはできる」という感覚のことです。この感覚が高いほど、困難な状況でも粘り強く行動できるとされています。

実際、心理学者バンデューラの実験では、自己効力感を高められた人の方が、課題への挑戦や継続率が有意に高いという結果が出ています。

つまり「私はやれる」と信じることが、行動を後押しする力になるのです。

しかし、シングルマザーは、自己肯定感や自己効力感が感じられにくい環境かもしれません。なぜなら、育児・家事・仕事のやることが物理的に多く「今日は〇〇ができなかった…」「うっかりミスしてしまった」ということが起こりやすいからです。

だからこそ、お子さんだけではなく、お母さん自身も小さな成功を意識していきましょう。

「今日は子どもと5分だけでも笑顔で話せた」――そんな小さな成功を積み重ねることで、お母さん自身の「私は頑張っている」「私はできる」と思う気持ちを大事にしていきましょう。

坂下

「今日のできたこと」「楽しかったこと」をノートに書き留めるのもおすすめです。毎日するのは大変かもしれないので、数日できない日があっても大丈夫!思い出したときに書き留めるくらいのゆるさで、無理なく続けるのがポイントです。

【シングルマザーの不登校の悩み③】頼れる人がいない

【シングルマザーの不登校の悩み③】頼れる人がいない

毎日1人で奮闘していると、ふと「頼れる人がいない」と不安に駆られることがあるかもしれません。

多くのシングルマザーが「サポートを求めるのは大事」とわかっていながら、実際には助けを求められないことがあります。その周囲に助けを求められない理由を分析すると、自分の思考を整理できるときがあります。

  • 「ひとりでなんとかしなきゃ」という責任感が強すぎる
  • 「助けを求めても、どうせ断られるはず」という悲観で最初の一歩が踏み出せない
  • 「こんな悩みを相談したら、母親失格と思われるのでは」という不安で躊躇する など

もし「自分は周囲に助けを求めることが苦手だ」と思われる場合は、その背景に自分のどんな気持ちがあるのか分析してみてください。

「周りの目を気にしすぎかも」「完璧主義かも」のように自分の思考のクセがわかると、新しい切り口での対処法が見つかることもあります。

もし「母親失格と思われるかも」のような恐怖や不安があるのであれば、学校には相談せず、自治体や民間の機関に相談するのがおすすめです。

以前、当協会のお話会に来られたお母さんは「最初は緊張したけれど、勇気を出してお話会に参加したら、『私だけじゃなかった』と思えて涙が出た」と話してくださいました。

頼ることは弱さではなく、解決に向かうための大事な力でもあるんです。

もし「頼れる人がいない」と感じたら、それはお母さん自身がかなり孤独で辛い状況かとお察しします。新しい環境に出向いたり初対面の人と話すのは緊張すると思いますが、最初の一歩をなんとか頑張れれば、新しい解決の糸口が見つかるのではと思います。

【シングルマザーの不登校の悩み④】実家との関係

シングルマザーの方は、子どもと一緒に実家で暮らす方も多いです。そして実家で暮らしていると、親や親戚から子どもの不登校について色々意見を言われて、対処に困るというお悩みもよく聞きます。

例えば、「不登校の孫がかわいそう」と実家の両親が子どもを過剰に甘やかしてしまうケースがあります。

お母さんとしては「これはお菓子をあげすぎ」などと内心思っていても、実家でお世話になっているからあまり強く言い返すことができずに、結果子どもがわがままになってしまうことがあります。

他にも、親戚から「無理にでも学校に連れて行くべき」などと言われるケースもあります。

お母さんとしても、無理にでも連れて行く方が子どものためになるのか、それとも今は待つべきなのかと心が揺れ動いているときに、周囲から色々な意見を言われると迷いが余計に大きくなって、苦しくなりますよね。

このようなケースは、第三者に入ってもらうことが一番スムーズに解決することが多いです。

実家や親戚に色々言われても「児童心理の専門家に相談した上で、こういう家庭内対応の方針にしている」とはっきり言えば、「専門家が言うなら」と引き下がることが多いからです。

大事なのは、お母さん自身に「うちの子は、この方針で行く」という軸があること、そして自分の決断に自信があることです。

お母さん自身に自信がないと、周囲の意見を聞くたびに不安になり、家庭内対応の軸がブレて、言動に矛盾が出たりしてお子さんも混乱します。お子さんを愛するがゆえに不安になるかと思いますが、不安で悩んでいる状態はお母さん自身がとても辛いでしょう。

ですから、不安を感じやすかったり、自信がないと感じる方は、第三者に相談することをおすすめします。専門家に相談して取るべき対応がわかれば、自信を持って行動できるようになるからです。

「うちの子は、この方針で育てる」という軸を持ち、それを周囲に自信を持って説明できるようにしておくことが大事です。

【シングルマザーの不登校の悩み⑤】周囲の偏見

【シングルマザーの不登校の悩み⑤】周囲の偏見

シングルマザーであることと不登校は直接の因果関係はありません。

にもかかわらず、周囲の偏見は根強く残っていることがあります。シングルマザーの方が孤独感を感じるのは当然のことです。

周囲の人はこちらの事情も全然わかっていないのですから放っておきましょう。・・・と言われても「周囲の目を気にしないようにしてるのに気になるから困っているのに!」という方も多いと思います。

そういうときは、こちらが知識をつけることがおすすめです。

例えばママ友に「不登校は愛情不足なんだよ」と言われたとしても、知識があれば「あぁ、それは20年前に教育評論家がよく言っていたことで、時代遅れの考えだ」と切り替えることができます。

なので、児童心理や不登校に関する本などをいくつか読んでおくと、周囲の意見に振り回されずに済むかもしれません。

【シングルマザーの不登校の悩み⑥】経済的不安

【シングルマザーの不登校の悩み⑥】経済的不安

多くのシングルマザーの方が、経済的不安を抱えています。

そして、経済的な制約はフリースクールや家庭教師といった選択肢を狭めることがあるので、それもシングルマザーの罪悪感に繋がることがあります。

ただし、すべてがお金次第ではありません。学校の教育相談や自治体の無料カウンセリング、NPOの活動など、実は「無料または低価格で利用できる支援」は意外と多いのです。

「お金がないからできない」ではなく、「今の条件でできることは何か」と視点を変えることが、不安を和らげる第一歩になります。

「シングルマザー家庭の不登校は「ママが自信をつける」が重要!」まとめ


シングルマザーとして不登校の子どもを支えるのは、孤独で不安で、時には自分を責めたくなるほど大変なことです。

しかし、「小さな成功体験を重ねる」「頼れる場所を見つける」「ママ自身が自信をつける」――この3つを意識するだけで、状況はかなり前進すると思います。

ひとり親で不登校の子をケアしていること自体、とても大変で、深い愛情がなければできないことなのです。「自分はとてもよく頑張っている!」と、まずはご自身を認めてあげてください。

そして、今はとても苦しいと思いますが、一番苦しいのは迷ったり悩んだりしている間なのです。しっかり悩んだ末に「うちの子は、この方針で育てる!」と決意し、お母さん内に家庭内対応の軸となる考え方ができ、自信を持って日々暮らせるようになると、苦しさはどんどん減っていきます。

なので、まずはお母さんが家庭教育の知識を学び、自信を持って元気になりましょう!

そして、頑張った分だけ後から振り返ったときに、お母さん自身も「ここまで一緒に頑張ってきたからこそ得られた絆」が、何よりの財産になるはずです。

どうか一人で抱え込まず、今日からできる一歩を踏み出してくださいね。