「どこまで関わっていいのか、正直わからない」
不登校の子どもを持ちながら仕事もしているお母さんから、私はこの言葉を何度も聞いてきました。
声をかけすぎると嫌がられる。
でも、何も言わないと「このままで大丈夫なの?」と不安になる。
頭では「見守ることが大事」と分かっていても、心が追いつかないですよね。
ネットで調べれば調べるほど、「心のエネルギーがたまるまで待ちましょう」「焦らず見守りましょう」
そんな言葉ばかりが並び、余計に苦しくなってしまう方も多いはずです。
この記事では、親子のバウンダリー(境界線)という視点から、その「どうすればいいのか分からない迷い」に、現場経験と心理学の両方から、具体的に答えていきます。
親子のバウンダリーとは?「どこまで口出ししていいの?」と迷う理由

最近、「バウンダリー(境界線)」という言葉を、SNSや書籍、子育て・人間関係の話題で目にすることが増えてきました。
バウンダリーとは、「どこまでが自分の領域で、どこからが相手の領域か」という心の境界線のことです。
この言葉が注目されている背景には、人との距離が近くなりすぎて、無自覚に疲れてしまう人が増えているという、現代ならではの課題があります。
ここではまず、なぜ不登校の子育てでこのバウンダリーが問題になりやすいのか、その理由を整理していきます。
親子のバウンダリー=冷たくすることではない

バウンダリーという言葉を聞くと、「距離を置くこと」「突き放すこと」「冷たくすること」というイメージを持つ方も多いかもしれません。
でも、心理学でいうバウンダリーは、まったく逆です。
関係を続けるために必要な線、それがバウンダリーです。
たとえば年末年始、久しぶりに親戚と会ったときのことを思い出してください。
「まだ学校行けてないの?」
「将来どうするの?」
悪気はないと分かっていても、心がザワザワすること、ありますよね。
あの感覚は、「自分が決めたいこと」「自分が責任を持ちたいこと」に、相手が無意識に踏み込んできたときに起きます。
バウンダリーが守られていない状態です。
子育ても同じです。
親が悪いわけでも、愛情が足りないわけでもありません。
ただ、距離が近くなりすぎているのです。
「放っておくと不安、関わると嫌がられる」親の本音

不登校の子を持つお母さんから、こんな声をよく聞きます。
「放っておくと、このまま社会から取り残される気がして…」
「でも、声をかけると機嫌が悪くなるんです」
仕事もあり、時間も限られている中で、常に頭の片隅に子どものことがある。それだけでも、相当な負荷ですよね。
この状態で「正しい関わり方をしなきゃ」と思えば思うほど、親は自分を追い込んでしまいます。
真剣にお子さんのことを考えているほど、不安や心配を感じてしまうのです。
愛着理論から見る、親が距離を取りづらくなる心理

心理学の愛着理論では、人は大切な相手が危機的状況にあるとき、無意識に距離を縮めようとするとされています。
不登校は、親にとって大きな「危機」です。
だからこそ、
- 先回りしたくなる
- 口を出したくなる
- 何とかしなきゃと思う
というのは、自然な反応です。
問題は、その距離が「長期間」続いてしまうことです。
距離が近すぎる状態が続くと、親は疲れ、子どもは息苦しくなってしまいます。
親子のバウンダリーが曖昧なときに起きやすい悩み

バウンダリーが曖昧になると、家庭の中でさまざまな「しんどさ」が生まれます。
それは決して、親の心が弱いからではありません。
構造の問題です。
ここでは、多くのお母さんが抱えがちな悩みを整理します。
これって過干渉?それとも普通の親心?

「朝起きなさいって言うのは過干渉?」
「学校の話を出すのはダメ?」
正解を探し続けていると、どんどん苦しくなります。
なぜなら、正解は一つではないからです。
大切なのは、「それは誰の不安を減らす行動か?」という視点です。
親の不安を下げるための関わりが増えていくと、バウンダリーはどんどん近づいていきます。
全部自分の責任だと感じてしまう共依存状態

不登校の家庭で非常に多いのが、「一番苦しんでいるのが親」という状態です。
- 子どもの問題なのに、親が眠れない
- 子ども以上に、親が将来を背負っている
心理学ではこれを共依存と呼びます。
愛情が深い人ほど、陥りやすい状態です。
子どもの将来が不安でコントロールしたくなる瞬間

将来への不安が強いと、人は「今」をコントロールしたくなります。
これは行動経済学でいう損失回避バイアスの影響です。
人は「得る喜び」より「失う痛み」を、約2倍強く感じると言われています。
だから、「今動かさないと取り返しがつかない」と感じやすいのです。
親子のバウンダリーを引けない親が陥りやすい思考のクセ

つい共依存状態になり、バウンダリーを引けない親子関係になるご家庭には共通点があります。
ここでは、私が10年以上の支援現場で見てきた、多くのお母さんに共通する「思考のクセ」をお伝えします。
「失敗させたくない」が強くなる損失回避バイアス

先ほど触れた損失回避バイアスは、「子どもに失敗させたくない」という気持ちを強めます。
実際の実験では、同じ金額でも「失う可能性」がある方が、人はより慎重になり、行動を変えることが分かっています。
不登校の親が焦るのは、理性の問題ではなく、脳の仕組みなのです。
自立させたいのに手放せない矛盾した気持ち

- 「自立してほしい」
- 「でも、この子にはまだ無理かも」
この矛盾に悩むのは、あなただけではありません。
多くの母親が、同じ葛藤を抱えています。
親子のバウンダリーを無理なく整えるための考え方

バウンダリーを整えた家庭では、
- 朝の支度を自分でする
- 親のイライラが減る
そんな変化が、少しずつ現れます。最後に、現実的な一歩についてお伝えします。
「問題所有の原則」を意識する

家庭教育の現場では、バウンダリーの考え方を「問題所有の原則」と呼びます。
「それは、誰の問題ですか?」
学校に行くかどうか、勉強するかどうか、将来をどう考えるか。
これらは子どもの問題です。
親の役割は、
- 考える余白を残す
- 失敗できる安全な場をつくる
- 問題を本人に返し続ける
ことです。
本来はお子さんの問題を、親御さんが自分ごとのように感じていないか?と気づくことが大事です。
「分かっているけど、できない」とき

「頭では分かっているんです」
「でも放っておけなくて」
そのような親御さんの声も、今までにたくさん聞いてきました。一度できた思考のクセはなかなか自分では直せないものなので、「なかなかできなくて当然」と思って焦らないでくださいね。
特に、子離れしたいのに「私がこの子をしっかり躾ないと」と思ってつい先回り指摘をしてしまったりする方は、ご自身の過去のトラウマが関わっていることが少なくありません。
「小学生時代に、忘れ物をして先生に怒られて悲しかった」「身だしなみで同級生にからかわれた」…そんな過去の悲しい気持ちを覚えていると「この子には同じ失敗をさせたくない」という気持ちが強くなってしまい、バウンダリーが曖昧になることがあります。
このような場合は、まずは親御さん自身が過去の自分を認めてあげて、「失敗しても大丈夫」と安心できることが大事です。
電話カウンセリングという選択

どうしてもバウンダリーが引けない、子どもに過干渉になってしまう、親の方が辛い…という方は、一度専門家のカウンセリングを受けることもおすすめです。
家庭教育推進協会(FEPA)の電話カウンセリングでは、
- 今どこで問題所有がズレているのか
- どこまでが親の役割なのか
- どう声をかけると境界線を守れるのか
を、具体的な日常場面で整理します。
電話カウンセリングの初回無料キャンペーンも行っておりますので、もしお悩みの際はご利用ください。
「なぜ親は苦しい?不登校家庭に必要な親子バウンダリー4原則」まとめ

境界線を守ることは、愛情を減らすことではありません。むしろ信頼を育てることです。
ここまで悩み、学び、行動しようとしているあなたは、もう十分すぎるほど頑張っています。
一人で抱えきれなくなったら、どうか、助けを使ってくださいね。
